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スピードと停止距離の関係は?
2021年から販売されている国内の新型の乗用車には,「衝突被害軽減ブレーキ」と呼ばれるシステムが搭載されています。これは,車や障害物に対する衝突時の被害を軽減するために,警告やブレーキアシストを行い減速をうながすものです。衝突がさけられないとシステム上で判断された場合には,自動でブレーキが作動します。あくまで緊急用のもののため,運転者は自分で気をつけておく必要があります。
では,運転者が危険を感じてから,ブレーキをかけて自動車が停止するまでに進む距離について考えてみましょう。
自動車が停止するまでに進む距離(停止距離)は,運転者が危険を感じてからブレーキを踏み,ブレーキが実際にきき始めるまでに車が進む距離(空走距離)と,ブレーキがきき始めてから車が停止するまでに進む距離(制動距離)の和で表します。
次の表は,自動車の速度と停止距離の関係を示す1つの実験結果です。
① はじめに,時速と空走距離の関係を調べてみましょう。
❶ 表の値から,どんなことが予想できるでしょうか。
❷ 時速xkmのときの空走距離をymとして,上の表をもとに次ページの図1に点をかき入れ,どんなグラフになるかを調べてみましょう。
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② 次に,時速と制動距離の関係を,①と同じようにして調べてみましょう。グラフは次の図2にかき入れましょう。
③ 上の2つのグラフを比べ,気づいたことをいいましょう。
④ 空走距離は時速に比例するとみなして,yをxの式で表してみましょう。比例定数は,グラフが点[mathjax]\((50,14)\)を通ると考えて,小数第二位まで求めましょう。
⑤ 制動距離は時速の2乗に比例するとみなして,yをxの式で表してみましょう。比例定数は,グラフが点[mathjax]\((50,18)\)を通ると考えて,小数第四位まで求めましょう。
⑥ ④,⑤で求めた式を使って,自動車が時速100km で走っているときの空走距離,制動距離,停止距離を,それぞれ求めましょう。
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スピードと停止距離の関係は?
乗用車の衝突被害軽減ブレーキが一定の性能を有していることを,国が認定する衝突被害軽減ブレーキ認定制度があります。歩行者に対する認定の主な要件は,次の5つです。
① 静止している障害物に対して50km/hで接近した際に,衝突しないまたは衝突時の速度が20km/h以下となること。
② 20km/hで走行する障害物に対して50km/hで接近した際に,衝突しないこと。
③ ①および②において,衝突被害軽減ブレーキが作動する少なくとも[mathjax]\(0.8\)秒前に,運転者に衝突回避操作をうながすための警報が作動すること。
④ 前方を横断する障害物に対して20km/hで接近した際に,衝突しないこと。
⑤ ④において,衝突被害軽減ブレーキが作動する前までに,運転者に衝突回避操作をうながすための警報が作動すること。
⑧ ①について,障害物に衝突しないためには,障害物の何m手前でブレーキがききはじめればよいかを話し合ってみましょう。
⑨ ③で,衝突被害軽減ブレーキが作動する少なくとも[mathjax]\(0.8\)秒前に警報が作動するのはなぜか,話し合ってみましょう。
衝突被害軽減ブレーキ搭載車であっても,絶対にぶつからないということではありません。衝突被害軽減ブレーキに対する正しい知識を身につけることが大切です。