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<1年p.54>

4節 数の集合

数の範囲と計算の関係は?

負の数を学んで,0と正の数だけではできなかった計算ができるようになりました。数の範囲と計算について考えてみましょう。

【1】 次の[mathjax]\(\boxed{\phantom{00}}\)にどんな自然数を入れても,計算の結果がいつでも自然数になるといえるでしょうか。

㋐ [mathjax]\(\boxed{\phantom{00}}+\boxed{\phantom{00}}\)

㋑ [mathjax]\(\boxed{\phantom{00}}-\boxed{\phantom{00}}\)

㋒ [mathjax]\(\boxed{\phantom{00}}\times \boxed{\phantom{00}}\)

㋓ [mathjax]\(\boxed{\phantom{00}}\div\boxed{\phantom{00}}\)

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自然数だけだと,できない計算があるね。

負の数をふくめると,四則の計算が全部できるのかな。

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次の課題へ!
負の数を学んで,計算できる範囲が広がったのかな?
P.54

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1 数の集合と四則

 目標 ▷ これまでに学んできた数と計算の関係についてまとめよう。

【1】からわかるように,数の範囲を自然数全体の集まりと考えると,加法や乗法の計算の結果はいつでも自然数にふくまれる。つまり,加法や乗法はいつでもできる。一方,減法や除法の計算の結果は自然数にふくまれない場合がある。つまり,減法や除法はできない場合がある。
このように数の範囲を「自然数全体」や「整数全体」など,ある条件にあてはまるものをひとまとまりにして考えるとき,そのまとまりを 集合 という。

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<1年p.55>

自然数は正の整数であるから,自然数の集合は,整数の集合にふくまれる。また,整数の集合は,分数や小数をふくんだ,分数で表せる数の集合にふくまれる。
自然数の集合,整数の集合,分数で表せる数の集合の関係は,前ページのような図で表すことができる。

 問 1  次の数は,数の集合の図で,どの部分に入りますか。前ページの図に,それぞれ書き入れなさい。

[mathjax] \(-16\),[mathjax] \(92\),[mathjax] \(1000\),[mathjax] \(0.3\),[mathjax]\(-\dfrac{1}{60}\),[mathjax] \(0\)

 問 2  次の表で,数の範囲を左側にあげた数の集合として四則を考えます。計算がいつでもできるものには〇,できない場合があるものには×を書き入れなさい。また,×の場合には,計算ができない例を1つ示しなさい。ただし,除法では,0でわることは除いて考えるものとします。

[mathjax]\(\begin{array}{|c|c|c|} \hline & \quad\text{加法}\quad & \text{減法} & \quad\text{乗法}\quad & \text{除法}\\ \hline \text{自然数}& \bigcirc & × & \bigcirc & ×\\ & & \text{例}\boxed{\phantom{0000}}& &\text{例}\boxed{\phantom{0000}}\\ \hline \text{整数}& & & & \\ \hline \text{分数で}& & & & \\ \text{表せる数} & & & &\\ \hline\end{array}\)

自然数の集合では,加法と乗法の計算はいつでもできる。数の集合を整数の集合にまで広げると,加法と乗法のほかに,減法もいつでもできるようになる。さらに,数の集合を分数で表せる数の集合にまで広げると,0でわることを除いた四則がいつでもできるようになる。

このように,数の集合は,四則が自由にできるように広げられてきたと考えることができる。

どんなことがわかったかな

数の集合は,四則が自由にできるように,数の範囲が広げられてきたと考えることができます。

次の課題へ!
数の集合には,ほかにどんなものがあるのかな?
P.56

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<1年p.56>

2 素数

 目標 ▷ 自然数について,数の集合にはどんなものがあるか調べよう。

Q  Question

偶数や奇数は,それぞれどのような数の集合でしょうか。ほかには,どのような数の集合が考えられるでしょうか。話し合ってみましょう。

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2でわり切れる数とわり切れない数だね。

倍数や約数の集まりも,数の集合といえるのかな。

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見方・考え方 

どんな分類ができるかな。

 例 1  数の集合には,たとえば,次のようなものが考えられます。

⑴ 10以下の自然数の集合

⑵ 1から20までの奇数の集合

⑶ 10の約数の集合

⑷ 5の倍数の集合

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 素数

 問 1  1から10までの自然数のうち,次の条件にあてはまる数をいいなさい。

⑴ 約数が1つだけの数

⑵ 約数が2つだけある数

⑶ 約数が3つだけある数

⑷ 約数が4つある数

7の約数は,1と7の2つだけである。このように,1とその数自身のほかには約数のない自然数を 素数 という。ただし,1は素数にふくめない。したがって,素数の集合は約数を2つだけもつ自然数の集まりである。

 問 2  1から20までの自然数のうち,素数をすべていいなさい。

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 素因数分解

Q  Question

30をいくつかの自然数の積で表してみましょう。どんな表し方があるでしょうか。

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30の約数を考えればいいね。

2つの数の積で表せるね。3つの数の積でも表せるかな。

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見方・考え方 

どんな表し方ができるかな。

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<1年p.57>

1と素数を除く自然数は,[mathjax] \( 30=2 \times 3 \times 5\)のように,素数の積で表すことができる。30の約数[mathjax] \(2\),[mathjax] \(3\),[mathjax] \(5\)のように,素数である約数を,もとの自然数の 素因数 といい,自然数を素因数だけの積で表すことを,その数を 素因数分解 するという。

素因数分解は,どんな順序で行っても同じ結果になる。

 例 2  150を素因数分解しなさい。

 考え方  右のように,素数で順にわっていき,商が素数になるまで続ける。

解答

[mathjax] \(\begin{eqnarray} 150 &=& 2\times 3\times 5\times 5 \\ &=&2\times 3\times 5² \end{eqnarray}\)

答 [mathjax] \( 2\times 3\times 5²\)

 問 3  次の数を素因数分解しなさい。

⑴ 24

⑵ 32

⑶ 75

⑷ 132

 問 4  ある自然数を2乗すると,1764になります。この自然数を求めなさい。

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 素因数分解の利用

 例 3  75の約数をすべて求めなさい。

解答

75 を素因数分解すると,

[mathjax]\(75=3\times 5²\)

3 の約数は[mathjax] \(1\),[mathjax] \( 3\) で,[mathjax] \(5²\) の約数は[mathjax] \(1\), [mathjax] \(5\),[mathjax] \( 5²\) である。

右の図のように考えると,75 の約数は, [mathjax] \(1\), [mathjax] \(3\), [mathjax] \(5\), [mathjax] \(15\), [mathjax] \(25\),[mathjax] \(75\) である。

答 [mathjax] \(1\), [mathjax] \(3\),[mathjax] \(5\), [mathjax] \(15\), [mathjax] \(25\), [mathjax] \(75\)

[mathjax]\(\begin{array}{CCCC} \text{3の約数} & &\text{5²の約数} & &\text{75の約数}\\ & &1&\rightarrow 1\times 1 = & 1\\ & \diagup & &\\ 1 & - & 5 & \rightarrow 1\times 5 =& 5\\ &\diagdown\\ & & 5² & \rightarrow 1\times5²= &25 \\ \end{array}\)
[mathjax]\(\begin{array}{CCCC} \text{3の約数} & &\text{5²の約数} & &\text{75の約数}\\ & &1&\rightarrow 3\times 1 = & 3\\ & \diagup & &\\ 3 & - & 5 & \rightarrow 3\times 5 =& 15\\ &\diagdown\\ & & 5²& \rightarrow 3\times5²= &75 \end{array}\)

 問 5  次の数を素因数分解して,約数をすべて求めなさい。

⑴ 45

⑵ 36

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<1年p.58>

 例 4  36と90の最大公約数を求めなさい。

解答

 


36 と90 をそれぞれ素因数分解すると,

[mathjax]\(36=2²\times 3² \)

[mathjax] \(90=2\times 3² \times 5\)

したがって, 最大公約数は,

[mathjax]\(2\times 3² = 18\)

答 18

[mathjax]\(\begin{eqnarray} 36 &=& 2 \times 2 &\times 3 \times 3\\ 90 &=& 2 & \times 3 \times 3 &\times 5 \\ \hline & & 2 & \times 3 \times 3 \end{eqnarray}\)

ふりかえり ▷小学校5年
2つの数の約数に共通な数を,その2つの数の公約数という。

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最大公約数を求めるには,例4のように,それぞれの数を素因数分解して,共通な素因数の積をつくればよい。

 問 6  次の各組の数の最大公約数を求めなさい。

⑴ [mathjax] \(60\),[mathjax] \(80\)

⑵ [mathjax] \(72\),[mathjax] \(96\)

⑶ [mathjax] \(80\),[mathjax] \(216\)

 問 7  [mathjax] \(84\),[mathjax] \(120\)をわり切れる自然数のうちで,もっとも大きい自然数を求めなさい。

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 例 5  36と90の最小公倍数を求めなさい。

解答

36 と90 をそれぞれ素因数分解すると,

[mathjax]\(36=2²\times 3²\)

[mathjax] \(90=2\times 3² \times 5\)

したがって, 最小公倍数は,

[mathjax] \( 2²\times 3² \times 5=180\)

答 180

[mathjax]\(\begin{eqnarray} 36 &=& 2 \times 2 &\times 3 \times 3\\ 90 &=& 2 & \times 3 \times 3 &\times 5 \\ \hline & & 2 \times 2 & \times 3 \times 3 & \times 5 \end{eqnarray}\)

ふりかえり▷小学校5年
 2つの数の倍数に共通な数を,その2つの数の公倍数という。

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最小公倍数を求めるには,例5のように,それぞれの数を素因数分解して,共通な素因数と残りの素因数との積をつくればよい。

 問 8  次の各組の数の最小公倍数を求めなさい。

⑴ [mathjax] \(16\),[mathjax] \(24\)

⑵ [mathjax] \(42\),[mathjax] \(54\)

⑶ [mathjax] \(12\),[mathjax] \(21\)

 問 9  30でわっても,75でわってもわり切れる自然数のうちで,もっとも小さい自然数を求めなさい。

どんなことがわかったかな

自然数の中には素数があり,素因数分解を利用すると,最大公約数や最小公倍数を求めることができます。

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<1年p.59>

確かめよう 4節 数の集合

□ 数の集合と四則の関係について理解している。 数の集合と四則 P.55問2

 1  四則の中で,自然数の集合でいつでも計算できるものをいいなさい。また,整数の集合でいつでも計算できるものをいいなさい。

□ 素数について理解している。 素数 P.56問2

 2  次の数で,素数はどれですか。

[mathjax] \(2\),[mathjax] \(4\),[mathjax] \(9\),[mathjax] \(11\),[mathjax] \(51\),[mathjax] \(89\)

□ 素因数分解をすることができる。 素因数分解 P.57例2

 3  次の数を素因数分解しなさい。

⑴ 40

⑵ 84

⑶ 144

□ 素因数分解を利用して,2数の最大公約数を求めることができる。 素因数分解の利用 P.58例4

 4  次の各組の数の最大公約数を求めなさい。

⑴ [mathjax] \(36\),[mathjax] \(42\)

⑵ [mathjax]\(2³ \times 3²\),[mathjax]\(2² \times 3³\)

□ 素因数分解を利用して,2数の最小公倍数を求めることができる。 素因数分解の利用 P.58例5

 5  次の各組の数の最小公倍数を求めなさい。

⑴ [mathjax] \(60\),[mathjax] \(84\)

⑵ [mathjax]\(2² \times 3\),[mathjax]\(2 \times 3 \times 5\)

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素数の話 Tea Break

次のような方法で,100以下の素数を求めてみましょう。

右の図のように自然数を書き並べ,まず1を消す。次に2を残して2の倍数を消す。さらに3を残して3の倍数を消す。このようにして,残った数のうち,最初にあるものを残して,その倍数を次々に消していくと,[mathjax] \(2\),[mathjax] \(3\),[mathjax] \(5\),[mathjax] \(7\),[mathjax] \(11\),…というように,25個の素数だけが残る。

このような方法は,古代ギリシャのエラトステネス(紀元前275頃〜紀元前194頃)に由来するので,エラトステネスの篩と呼ばれています。右の図は,エラトステネスの篩をもとにくふうしたものです。

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<1年p.60>

1章 「正の数・負の数」を学んで

 できるようになったこと  身のまわりの課題へ ▷P.63,64

正の数と負の数について,大小を比べたり,数直線に表したりすることができる。

正の数と負の数の計算を,小学校で学んだ計算と同じようにできる。

身のまわりや数学の中から見つけた問題を,正の数,負の数を使って,解決することができる。

 さらに学んでみたいこと 

これからもっと学んでみたいことや,疑問に思ったことを書いておこう。

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数学へのいざない RSA暗号

現在の社会はコンピュータ社会と呼ばれ,ネット上にクレジットカードや銀行口座の番号など個人情報が飛び交っています。そこで,このような個人情報を暗号化し,安全性を確保する必要があります。

現在,インターネットで広く使われている公開鍵暗号の代表的なものの1つに「RSA暗号」があります。RSA暗号は,暗号化する鍵を公開しても,簡単には解読できません。その理由は,素因数分解に関係しています。桁数が大きくなっても2数の積は簡単に求められますが,桁数が大きい数を素因数分解するのは,コンピュータを使っても長い時間がかかる,という性質を使っています。そこで,RSA暗号では,桁数の大きい2つの素数の積を,暗号をつくるための鍵として公開し,もとの2つの素数を,暗号をもとにもどすための秘密の鍵として使っています。このように,素因数分解の難しさが,RSA暗号の安全性を支えています。

 関連  裏見返し